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静寂の中、寝返りを打って隣を向くと、この部屋の主がスヤスヤと寝息をたてて眠りこんでいる。
昨夜遅くまで語り合っていた為か、その眠りはとても深いようにも感じられた。
どこか疲れたようにも感じる表情と緩やかな空気が、彼女が人間であることを教えてくれる。
これが悪魔であれば、―――うまくは言葉に出来ないが、ひんやりする感じが肌に伝わってくる筈だ。
「んっ…。」
軽く体を伸ばし、横の人物を起こさないようにそっとベッドを抜け出す。
素足のまま、私を導くように揺れ動くカーテンをくぐりぬけ、テラスに出ると
冷たい石の感触を足の裏に感じると共に、どこかいつもと違う魔界の風を感じた。
湿った風。雨が今にも降り出しそうな冷たい湿気を帯びた空気。
それなのにぼうっと輝く月に、雲がわざとそこだけ避けているように見えた。
(静かすぎる朝だな。…鳥もいない。)
なのに、テラスの柵には沢山の白い羽が散らばっていて。
まるで今まで羽を休めていた鳥が、嵐を恐れて逃げ出してしまったかのような…
「―――珍しいですね。白い羽なんて。」
「わっ!?びっくりした。」
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